特殊小型船舶操縦士(水上オートバイ)の試験は、身体検査・学科・実技の 3 段階で、それぞれに公表された合格基準があります。学科は四肢択一 40 問を 50 分で解き、各科目で半分以上かつ 40 問中 26 問以上。実技は取扱い 80 点・操縦 220 点の計 300 点で、合計 210 点以上なら合格です(科目別の足切りはありません)。合格率は公表されておらず、公表されているのは合格者数だけです。この記事では、JMRA の受験案内などに書かれている不合格の条件と基準だけを整理します。
1 問だけ解いてみる
巡航中の燃料消費量が毎時5Lのエンジンを積む船で、片道24海里の航路を8ノットで往復する予定である。往路・復路に加えて、片道分と同量を予備として確保する燃料計画の考え方に従うと、出航前に用意しておくべき燃料は何Lか。
選択肢をタップすると、正誤と解説が表示されます。
解説を読む
片道24海里を8ノットで航行すると、所要時間は24÷8=3時間。毎時5L消費するので片道の燃料は5×3=15L、往復では15×2=30Lとなる。これに片道分と同量の15Lを予備として加えると、30+15=45Lになる。
試験は身体検査 → 学科 → 実技の順
小型船舶操縦士の試験は、一般財団法人 日本海洋レジャー安全・振興協会(JMRA)が実施しています。試験は身体検査・学科試験・実技試験の順に行われ、特殊の受験案内にも「身体検査に合格しない場合は、学科試験及び実技試験は受験できません。」と明記されています。
合格の有効期間は、身体検査が 1 年、学科試験と実技試験が 2 年です。学科に合格して実技が不合格だった場合も、有効期間(2 年)内であれば学科を受け直す必要はありません。
学科は「1 科目も落とさない」ことが条件
特殊の学科試験は、心得 12 問・交通の方法 10 問・運航 18 問の 40 問を 50 分で解く四肢択一です。合格には、各科目で半分以上の正解と、合計で 40 問中 26 問以上の正解の両方が必要です。
| 科目 | 出題数 | 合格に必要な正解数 |
|---|---|---|
| 小型船舶操縦者の心得及び遵守事項 | 12 問 | 6 問以上 |
| 交通の方法 | 10 問 | 5 問以上 |
| 運航 | 18 問 | 9 問以上 |
| 合計 | 40 問 | 26 問以上 |
JMRA は合計の基準を「各科目合計問題数の 65 パーセント以上(端数切り上げ)」と案内しています。合計が 26 問以上でも、どれか 1 科目が半分に届かなければ不合格です。得意科目で稼いで苦手科目を捨てる作戦は、この基準の上では成り立ちません。
一級・二級(湖川小出力限定を除く)の免許を持っている人が特殊を受ける場合は、施行規則第 109 条により学科の心得と交通が免除され、運航 18 問だけを受けます(JMRA は試験時間を 20 分と案内しています)。
実技は合計 210 点以上。特殊には科目別の足切りがない
実技試験は「小型船舶の取扱い」(発航前の準備及び点検/結索)と「操縦」(安全確認/発進、直進及び停止/旋回及び連続旋回/危険回避/人命救助)の 2 科目です。試験船は定員 3 名の水上オートバイで、受験者 1 人に試験員 1 人が同乗します。JMRA の「試験について」のページでは試験時間は約 20 分です(受験案内 PDF には「概ね 15 分」とあり、どちらの時間が何を含むかは明記されていません)。
合格の基準は、JMRA の「受有資格別配点及び免除一覧」で区分ごとに示されています。一級・二級は科目ごとの基準と合計の基準の両方があるのに対し、特殊は合計の基準だけです。
| 区分 | 科目と配点 | 科目ごとの基準 | 合計の基準 |
|---|---|---|---|
| 一級・二級 | 取扱い 60 点・基本操縦 120 点・応用操縦 120 点 | 36 点以上・72 点以上・72 点以上 | 300 点中 210 点以上 |
| 特殊 | 取扱い 80 点・操縦 220 点 | なし | 300 点中 210 点以上 |
一級・二級では、どれか 1 科目が 60% を下回れば合計が足りていても不合格です。特殊にはこの科目ごとの基準がないため、配点の上では、取扱いで点を落としても操縦で補える構造になっています。ただし操縦の中には、次に挙げる「失敗」とされる条件があります。
受験案内に書かれた「失敗」の条件
JMRA の「特殊小型船舶操縦士試験について」(受験案内 PDF)は、操縦のうちコース走行と人命救助について、何をすると失敗になるかを具体的に書いています。
コース走行はコース 1(発進→直進→単旋回→危険回避→単旋回→停止)とコース 2(発進→8 の字旋回→スラローム→停止)で、いずれも「中速」(概ね 25〜40km/h)で行います。受験案内の記載は次のとおりです。「コース走行に失敗すると再試験となります。コースを間違えた場合、ブイに衝突した場合、同乗者を含む乗艇者が落水した場合、指定された速力で走行できなかった場合、基準コースを大きく逸脱した場合、危険回避の方法が適切でない場合はコース走行失敗と見なします。」
- コースを間違えた
- ブイに衝突した
- 同乗者を含む乗艇者が落水した
- 指定された速力で走行できなかった
- 基準コースを大きく逸脱した
- 危険回避の方法が適切でない
危険回避について受験案内は「この回避動作は、直前に迫った障害物を、加速することにより急旋回して避ける方法です。回避の際に加速することが重要なポイントとなりますが、過剰な加速によって振り落とされたり転覆することのないように、速力を調整しましょう。」と説明しています。
人命救助は、要救助者に見立てたブイをどちらの舷からでも救助でき、ブイの収容は操縦者が行います。失敗の条件は「救助に失敗した場合は、直ちに再救助に向かってください。ブイを見失った場合や、ブイを行き過ぎてしまった場合、あるいはブイに激しく接触した場合は救助失敗と見なします。」とされています。
取扱いにも時間の区切りがあります。発航前の点検はエンジン・法定備品及び法定書類・艇体から各 2 箇所ずつ指定されて 2 分、結索はもやい結び・巻き結び・一重つなぎ・クリート止めから 1 つで 30 秒、機関の始動と停止は各 30 秒です。受験案内は「小型船舶の取扱いに関する試験には時間制限(時間は下記実技試験の概要参照)があります。実施途中であっても打ち切ることがあります。」としています。
受験案内 PDF は 2021 年 7 月版で、2026 年 9 月時点でも JMRA の公式サイトから現行の資料としてリンクされています。「再試験」が同じ日のやり直しを指すのか、後日の受け直しを指すのかは、受験案内にも JMRA の FAQ にも書かれていません。実技の開始前には操縦装置や速度感覚を確かめる「慣熟走行」があり、この間は採点対象外です。
試験が途中で中止されることがある場合
受験案内は、試験全体(身体検査・学科・実技)について「試験中、次の事項に該当するときは、試験が途中であっても試験を中止することがあります。」として、次の 3 つを挙げています。
- 試験員の指示に従わないとき
- 不正行為と疑わしき行動があったとき
- 受験者の心身の状態により、試験続行が困難であると試験員が判断したとき
実技については別に「気象、海象等の影響により、試験を安全に実施できないと判断した場合は、試験を中止することがあります。」とあります。操縦中の注意として「操縦中に試験員が肩を叩いた場合は、速やかに停止してください。」「安全を確保するため、試験員が緊急エンジン停止スイッチを作動させることがあります。」とも書かれています。
服装は「雨や波しぶきで濡れても良いもので、落水時の衝撃に耐えうるものを着用してください。水着のみの着用や裸足、サンダル履きはご遠慮ください(かかとが固定できるものは可)。」と指定されています。
点検や安全確認での声出しについて、JMRA の FAQ(級を限定しない質問への回答)は「ご安心ください。口述試験ではありません。実技試験の実施目的は、船を安全に操縦できるかどうかなので、発声が採点に影響することはございません。」としています。
身体検査の基準
身体検査に合格しないと学科・実技は受けられません。JMRA の「試験について」に載っている合格基準は次のとおりで、一級・二級・特殊・湖川で共通です。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 視力 | 両眼とも0.5以上(矯正可)。一眼の視力が0.5未満の場合は、他眼の視力が0.5以上であり、かつ、視野が左右150度以上であること。 |
| 色覚 | 夜間において船舶の灯火の色を識別できること。(灯火の色が識別できない場合は、日出から日没までの間において航路標識の彩色を識別できれば、航行する時間帯が限定された免許が取得できます。) |
| 聴力 | 5m以上の距離で話声語(普通の大きさの声音)の弁別ができること。(補聴器可) |
| 疾病及び身体機能の障害 | 軽症で小型船舶操縦者の業務に支障をきたさないと認められること。 |
合格率は公表されていない
JMRA が公表している統計は合格者数だけで、受験者数や合格率は公表されていません。「特殊の合格率は ○%」という数字は、公式資料からは出せません。特殊の合格者数(全国計)は次のとおりです。
| 年 | 合格者数 |
|---|---|
| 2021 | 23,533 |
| 2022 | 18,237 |
| 2023 | 15,650 |
| 2024 | 15,488 |
| 2025 | 14,594 |
この記事は 2026 年 9 月 23 日時点で JMRA・国土交通省が公表している内容をまとめたもので、合否を保証するものではありません。試験の内容や基準は変更されることがあるため、受験前に必ず公式サイトで最新の内容を確認してください。
よくある質問
- 特殊小型船舶操縦士の学科試験は何問正解すれば合格ですか?
- 40 問中 26 問以上、かつ心得 12 問中 6 問以上・交通の方法 10 問中 5 問以上・運航 18 問中 9 問以上の正解が必要です。合計が足りていても、1 科目でも半分に届かなければ不合格です。
- 実技で取扱い(点検や結索)がうまくできないと不合格ですか?
- 特殊の実技の合格基準は、取扱い 80 点・操縦 220 点の合計 300 点中 210 点以上だけで、科目ごとの基準はありません(JMRA「受有資格別配点及び免除一覧」)。一級・二級には科目ごとの基準があるので、そこが違います。
- 実技でブイに当たったら不合格ですか?
- JMRA の受験案内は、コース走行中にブイに衝突した場合をコース走行失敗としており、「コース走行に失敗すると再試験となります」と書いています。人命救助でブイに激しく接触した場合も救助失敗とされます。
- 特殊小型船舶操縦士の合格率はどのくらいですか?
- JMRA は合格率を公表していません。公表されているのは合格者数だけで、特殊は 2025 年に 14,594 人が合格しています。
- 安全確認の声出しがうまくできないと減点されますか?
- JMRA の FAQ は「口述試験ではありません」としたうえで、「発声が採点に影響することはございません」と回答しています。