小型船舶操縦士(船舶免許)学科試験

海上衝突予防法の行会い・横切り・追越し — 船舶免許で問われる避航のルールを条文で確認

小型船舶操縦士の学科試験「交通の方法」(一級・二級で 14 問、特殊で 10 問)の土台になるのが海上衝突予防法です。なかでも追越し・行会い・横切りの 3 つの航法(この記事ではいわゆる「避航の 3 原則」と呼びます)は、どちらの船がどう動くかを条文が具体的に定めています。この記事では e-Gov に掲載された条文を逐語で引きながら、3 つの航法と避航船・保持船の関係、帆船や漁ろう中の船との関係を整理します。

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二級・一級標準

ウォータージェット推進の小型船舶(水上オートバイなど)の操縦特性について、正しいものはどれか。

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ジェット推進は取り込んだ水を後方へ噴出し、その噴流の向きを変えて操舵する方式であり、推力(スロットル)を失うと同時に舵の効きも失う。推進器は船底の内側にあって露出しないため浅所での損傷や遊泳者の巻き込みには強く、後進はデフレクタ(逆進バケット)で噴流を前方へ向けて行うのでポンプ自体を逆転させるわけではない。速力を落とすほど噴流は弱まって舵の効きも落ちるため、狭い水域でも一定の速力を保って操船する。

3 つの航法が使われる前提

3 つの航法は、海上衝突予防法(昭和 52 年法律第 62 号)の「第二節 互いに他の船舶の視野の内にある船舶の航法」に置かれ、第 11 条は「この節の規定は、互いに他の船舶の視野の内にある船舶について適用する。」と定めています。霧の中でも、互いに相手が見えていればこの節の規定が使われます(第 19 条第 1 項は視界制限状態の規定の対象から「互いに他の船舶の視野の内にあるものを除く。」としています)。

もう一つの前提は対象の船です。追越し(第 13 条)の主語は「追越し船」「船舶」で船の種類を限定していませんが、行会い(第 14 条)と横切り(第 15 条)は「二隻の動力船」の間の規定です。

追越し — 追い越す船が避ける(第 13 条)

第 13 条第 1 項は「追越し船は、この法律の他の規定にかかわらず、追い越される船舶を確実に追い越し、かつ、その船舶から十分に遠ざかるまでその船舶の進路を避けなければならない。」と定めています。「この法律の他の規定にかかわらず」とあるので、追越しの場面ではほかの航法の規定より追越し船の避ける義務が優先します。

どの位置から近づけば「追越し船」になるかは、第 2 項が角度で定めています。「船舶の正横後二十二度三十分を超える後方の位置(夜間にあつては、その船舶の第二十一条第二項に規定するげん灯のいずれをも見ることができない位置)からその船舶を追い越す船舶は、追越し船とする。」 げん灯の照射範囲も第 21 条第 2 項で「正横後二十二度三十分まで」なので、その後ろからはげん灯が見えません。

  • 迷ったときの判断: 第 3 項「船舶は、自船が追越し船であるかどうかを確かめることができない場合は、追越し船であると判断しなければならない。」
  • 追い越す舷(右か左か)を指定する規定は第 13 条にはありません
  • 追い越される側は、次の第 17 条により針路と速力を保つ側(保持船)になります

行会い — 両船とも右に転じる(第 14 条)

第 14 条第 1 項は「二隻の動力船が真向かい又はほとんど真向かいに行き会う場合において衝突するおそれがあるときは、各動力船は、互いに他の動力船の左げん側を通過することができるようにそれぞれ針路を右に転じなければならない。」と定めています。両船とも右に転じて、左げん同士ですれ違う形です。

注意したいのは、行会いには避航船と保持船の区別が無いことです。追越しや横切りの条文は一方の船に「進路を避けなければならない」と定めますが、第 14 条は「各動力船は」と両船に同じ動作を求めています。

行会いの判断(第 2 項)は、他の動力船を「船首方向又はほとんど船首方向に見る場合」が前提です。夜間のマスト灯二個も判断材料の一つですが、長さ 50 メートル未満の動力船は後方のマスト灯を掲げなくてよい(第 23 条第 1 項第 1 号ただし書)ため、「マスト灯 2 個が縦に並べば行会い」と覚えるのは不正確です。迷ったときは、第 3 項により行会いの状況にあると判断します。

横切り — 相手を右げん側に見る動力船が避ける(第 15 条)

第 15 条第 1 項は「二隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない。この場合において、他の動力船の進路を避けなければならない動力船は、やむを得ない場合を除き、当該他の動力船の船首方向を横切つてはならない。」と定めています。

よく「相手の船尾を通れ」と言われますが、条文は船尾側を通る方法を指定しておらず、後段のとおり相手の船首方向を横切ってはならないという禁止の形です。避ける関係は互いをどちらのげんに見るかで決まり、第 13〜18 条に船の大きさや速さによる基準はありません。

避航船と保持船 — 「できる」と「しなければならない」の違い

追越しと横切りのように一方が避ける場面では、第 16 条と第 17 条が両船の動き方を定めます。避ける側について、第 16 条は「この法律の規定により他の船舶の進路を避けなければならない船舶(次条において「避航船」という。)は、当該他の船舶から十分に遠ざかるため、できる限り早期に、かつ、大幅に動作をとらなければならない。」としています。

避けられる側は、第 17 条第 1 項「この法律の規定により二隻の船舶のうち一隻の船舶が他の船舶の進路を避けなければならない場合は、当該他の船舶は、その針路及び速力を保たなければならない。」により保持船になります。ただし例外があります。

保持船が針路・速力を保つ義務の例外(第 17 条)
項条件保持船がとる動作義務か任意か
第 2 項避航船が適切な動作をとっていないことが明らかになった場合直ちに衝突を避けるための動作任意(「とることができる」)
第 3 項間近に接近し、避航船の動作だけでは衝突を避けられないと認める場合衝突を避けるための最善の協力動作義務(「とらなければならない」)

第 2 項は、横切りの場面について「保持船は、やむを得ない場合を除き、針路を左に転じてはならない。」とも定めています。

帆船・漁ろう中の船との関係(第 18 条)

動力船が帆船や漁ろう中の船と出会ったときは、相手を右げんに見るかどうかではなく第 18 条で決まります。第 18 条第 1 項は「第九条第二項及び第三項並びに第十条第六項及び第七項に定めるもののほか、航行中の動力船は、次に掲げる船舶の進路を避けなければならない。」とし、運転不自由船・操縦性能制限船・漁ろうに従事している船舶・帆船を挙げています。第 14 条第 1 項のただし書(第 15 条第 2 項で準用)が、この場合を行会い・横切りの規定から外しています。

よく言われる「漁船は常に優先」は、次の 2 点で条文どおりではありません。

  • 第 18 条の対象は「漁ろうに従事している船舶」で、第 3 条第 4 項により「船舶の操縦性能を制限する網、なわその他の漁具を用いて漁ろうをしている船舶」を指します。漁船であれば何でもよいわけではありません
  • 追越しの場面では、第 13 条の「この法律の他の規定にかかわらず」が働きます。帆船や漁ろうに従事している船舶が追い越す側なら、その船が避けます

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この記事は海上衝突予防法の条文に基づく解説で、合否を保証するものではありません。法令は改正されることがあるため、最新の条文は e-Gov 法令検索で確認してください。

よくある質問

「右から来る船が優先」は正しいですか?
二隻の動力船が互いに進路を横切る場合に限れば、第 15 条第 1 項により、相手を右げん側に見る動力船が避けます。ただし条文に「優先」という語は無く、行会い・追越しや、帆船・漁ろうに従事している船舶が相手の場合には当てはまりません。
行会いでは、どちらの船が避航船になりますか?
行会いには避航船と保持船の区別がありません。第 14 条第 1 項は「各動力船は」として、両船にそれぞれ針路を右に転じることを求めています。
追越しは右側と左側のどちらから行えばいいですか?
第 13 条には追い越す舷を指定する規定はありません。定められているのは、追い越す船が、確実に追い越して十分に遠ざかるまで相手の進路を避けることです。

出典

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