「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」は、文部科学省 科学技術・学術審議会 技術士分科会が平成 26 年 3 月 7 日に策定し、令和 5 年 1 月 25 日に改訂した文書です。改訂版は令和 8 年度の技術士第二次試験から適用されます。8 項目の名称は改訂の前後で変わっておらず、文言が変わったのは 4 項目と前文です。口頭試験で問われるのはこのうち 6 項目で、「専門的学識」と「問題解決」は筆記試験の側で評価されます。
改訂版は令和 8 年度の第二次試験から適用される
令和 8 年度の受験申込み案内は「令和 5 年 1 月 25 日に開催された文部科学省科学技術・学術審議会技術士分科会において「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」が改訂されました。」としたうえで、「令和 8 年度の技術士第二次試験より、改訂後の「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」に基づいて実施します。」と案内しています。令和 7 年度までは従来の版で実施されました。
同じ案内は「なお、筆記試験及び口頭試験の試験内容についての変更はありません。」とも書いています。試問事項・配点・試問時間といった試験の構成は変わらず、改訂されたのは評価の物差しにあたる定義文です。
8 項目の名称は改訂の前後で変わっていない
- ① 専門的学識
- ② 問題解決
- ③ マネジメント
- ④ 評価
- ⑤ コミュニケーション
- ⑥ リーダーシップ
- ⑦ 技術者倫理
- ⑧ 継続研さん
改訂で項目の追加・削除・改称は行われていません。表記は「継続研さん」です。
文言が変わったのは 4 項目。前文も書き換えられている
| 項目 | 文言の変更 | 主な変更点 |
|---|---|---|
| 専門的学識 | なし | — |
| 問題解決 | あり | 第 1 文に「必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し、」、第 2 文に「多角的な視点を考慮し、ステークホルダーの意見を取り入れながら、」が追加 |
| マネジメント | なし | — |
| 評価 | なし | — |
| コミュニケーション | あり | 第 1 文に「情報技術を活用し、」が追加。「明確かつ効果的な意思疎通を行うこと」が「明確かつ包摂的な意思疎通を図り、協働すること」に |
| リーダーシップ | なし | — |
| 技術者倫理 | あり | 「社会、文化及び環境に対する影響」が「社会、経済及び環境に対する影響」に。「次世代にわたる社会の持続性の確保に努め」が「次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し」に。第 2 文に「、文化的価値を尊重すること」が追加 |
| 継続研さん | あり | 全面的に書き換え |
変わったのは 8 項目の定義文だけではありません。本体の資料では前文も全面的に書き換えられており、国際エンジニアリング連合(IEA)が定める「修了生としての知識・能力(GA)と専門職としてのコンピテンシー(PC)」に準拠することが求められている旨や、2021 年 6 月に IEA が行った GA&PC の改訂(第 4 版)の内容が書かれています。
新旧対照表は 8 項目だけを対照しており、前文は収録していません。対照表だけを見ると「変わったのは 4 項目」と読めてしまうため、本体の資料もあわせて確認してください。
口頭試験で問われるのは 8 項目のうち 6 項目
口頭試験の試問事項に含まれるのは、マネジメント・評価・コミュニケーション・リーダーシップ・技術者倫理・継続研さんの 6 項目です。「専門的学識」と「問題解決」は含まれず、筆記試験の側で評価されます。
| 項目 | 筆記試験 | 口頭試験 |
|---|---|---|
| 専門的学識 | 必須科目Ⅰ・選択科目Ⅱ-1・Ⅱ-2・Ⅲ | — |
| 問題解決 | 必須科目Ⅰ・選択科目Ⅲ | — |
| マネジメント | 選択科目Ⅱ-2 | あり |
| 評価 | 必須科目Ⅰ・選択科目Ⅲ | あり |
| コミュニケーション | 必須科目Ⅰ・選択科目Ⅱ-1・Ⅱ-2・Ⅲ | あり |
| リーダーシップ | 選択科目Ⅱ-2 | あり |
| 技術者倫理 | 必須科目Ⅰ | あり |
| 継続研さん | — | あり |
口頭で問われる 6 項目の現行の定義文
- マネジメント: 「業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。」
- 評価: 「業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。」
- コミュニケーション: 「業務履行上、情報技術を活用し、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ包摂的な意思疎通を図り、協働すること。」(このほかに海外業務に関する記述が続きます)
- リーダーシップ: 「業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。」(このほかに海外業務に関する記述が続きます)
- 技術者倫理: 「業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、経済及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。」(このほかに法令等の遵守と責任の範囲に関する 2 文が続きます)
- 継続研さん: 「CPD 活動を行い、コンピテンシーを維持・向上させ、新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高めること。」
公表資料を読むときの注意
- 表記は「継続研さん」。項目名は改訂の前後で変わっていない
- 定義文の正本は「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」本体で、読点は「、」、CPD は半角で書かれている。受験申込み案内は組版上「,」や全角の「CPD」を用いているが、これは改訂版の公式文言の性質ではない
- 新旧対照表の「改訂前」欄は平成 26 年 3 月 7 日の原文と逐語一致ではない(表記の修正が入っている)ため、「改訂前 = 平成 26 年の原文」として引用しない
- 口頭試験の試問事項 4 項目の並びは、公式資料の間で書き方が一致しない箇所があるとされている。並び順そのものを試験のルールとして扱わない
なお平成 26 年 3 月 7 日の原策定版は見出しの付いた 7 項目で構成されており、継続研さんは独立した項目ではなく、前文の末尾に「十分な継続研さん(CPD)を行うことが求められる」旨として書かれていました。この一文が後に第 8 項目として定式化されています。
Lorebook では収録 165 問すべてを無料で公開しており、10 問で合格ラインとの距離を測る「実力チェック」も用意しています。
この記事は公表資料に書かれている内容の整理で、合否を保証するものではありません。コンピテンシーと試験の取扱いは年度ごとに公表されるため、受験する年度の文部科学省・日本技術士会の公式サイトで必ず確認してください。
よくある質問
- 改訂版のコンピテンシーはいつから適用されますか?
- 令和 8 年度の技術士第二次試験からです。令和 7 年度までは従来の版で実施されました。
- 改訂で口頭試験の内容は変わりますか?
- 令和 8 年度の受験申込み案内は「なお、筆記試験及び口頭試験の試験内容についての変更はありません。」と案内しています。試問事項・配点・試問時間は変わりません。
- コンピテンシーは何項目ありますか?
- 8 項目です(専門的学識・問題解決・マネジメント・評価・コミュニケーション・リーダーシップ・技術者倫理・継続研さん)。改訂で項目の追加・削除・改称は行われていません。
- 口頭試験ではコンピテンシー 8 項目すべてが問われますか?
- 問われるのは 6 項目です。「専門的学識」と「問題解決」は口頭試験の試問事項に含まれず、筆記試験の側で評価されます。
- 「継続研さん」と「継続研鑽」はどちらの表記ですか?
- 公表資料の表記は「継続研さん」です。
出典
- 公益社団法人 日本技術士会 掲載「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」(平成 26 年 3 月 7 日策定 / 令和 5 年 1 月 25 日改訂・科学技術・学術審議会 技術士分科会)
- 公益社団法人 日本技術士会「コンピテンシー新旧対照表」
- 公益社団法人 日本技術士会「令和 8 年度技術士第二次試験の実施について」(改訂版コンピテンシー適用の告知)
- 公益社団法人 日本技術士会「令和 8 年度技術士第二次試験受験申込み案内」
- 公益社団法人 日本技術士会「技術士第二次試験実施大綱」(令和 8 年度実施案内の添付)
- 公益社団法人 日本技術士会「口頭試験に関する質問」
- 文部科学省「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」(平成 26 年 3 月 7 日)